ラララ さよならのかわりに

涙のかわりに

ラララ 君と僕の間に

ラララ ひとつの歌





***




そんな歌を歌っている女の子が、昔いた。
僕と同じで、病院で過ごしていた女の子だった。
名前を知ったのは随分後の話なんだけど。
それまで僕は、「歌の女の子」って呼んでた。


その子は歌わない時は病院を探検する子だった。
それでもって、偶然僕等の部屋に入ってきたんだ。


それがその子との、ちゃんとした出会いだった。




その子は、とっても変わっていた。
歌じゃないと意思疎通が出来ない子なんだって、1号様から聞いた。
だから会話はおろか、普通に挨拶が出来ないから、
歌う時意外はしゃべらない子なんだって。



「おはよう、僕は12号。君は・・・・・ ちゃんだよね?」

「・・・・・・・・・。」


返事をしてくれないのは分かっている。仕方のないことなんだ。
でも、そのかわりに ちゃんはにっこり笑ってくれる。
彼女はいつも笑顔だった。

その笑顔が、僕はいつの間にか大好きになっていた。
そして、 ちゃんと歌うのが、大好きになった。


「心がちょっと痛いのは笑顔が眩しいからだね」
「さみしい なんて言わないのがいいよね きっと会えるね」


「僕の歩く道と」
「君の歩く道は」
「「つながっているから同じ道だから・・・・・・・」」



一生懸命練習して、やっと歌えるようになったこの歌。
まだ9歳くらいの頃だから、歌詞の意味は良くわからないけど、いい歌だと思った。
彼女が嬉しそうに僕と歌ってくれる。


僕は幸せの感覚を覚えた。





***







あれからしばらくして。
僕が10歳の時、 ちゃんはいなくなった。


お兄ちゃんからの手紙で、「神と波長が平均以上に合うらしく、連れて行かれた。」と知った。
そのあとの文章が、僕の脳裏に焼きついた。


「他の波長が合う人の為に、実験台にされるらしい。何をされるんだろうな。」





「さよなら なんて言わなくても
いいよねまたあえるね
元気で なんて言わなくても
元気で またあえるね

僕の見る空と 君の見る空は
つながっているから
同じ空だから・・・・・」


その歌の、その節が最後だった。

もう歌は聞こえなくなった。
どこかで、小さくとも必ず聞こえていたのに。
彼女の声は、消えてしまった。


あの笑顔も、もう、見れないんだ。




***********




そこで、意識が戻った。

そうだ、僕はまた生き返ってしまったんだ。
また神経塔へ行かなくては。
上級天使には、逆らえない。


「世界を、己を癒せ。」

その声とともに出発した。
自分と世界の為に、僕は進まなくてはいけないんだ。
(懐かしい思い出に、浸っている暇など無いんだ。)




神経塔地下一階。ポートを降りてすぐ、いつもと違う異変に気づく。


(声・・・・・?)




ラララさよならのかわりに

涙のかわりに

ラララ 君と僕の間に

ラララ ひとつの歌






(この声は・・・・・・!!!)


僕は走った。異形に追われているが、今は無視だ!
彼女が、 ちゃんがいる!!


しかし、どこを探しても彼女は見つからない。



「・・・・・・!!・・・・・・!」


声が出ない。歌えない。
彼女と歌いたいのに。
って、叫びたいのに。


よく聞けば、その声はどこか弱弱しくて、
段々と聞こえなくなるのが分かった。


(どこにいるの?)



彼女を見つけたら、何を言おうかな?
あ、話せないんだった・・・・・・。

じゃあ、しゃべらない代わりに、
思いっきり抱きついても、大丈夫だよね?





(僕は、消えかけた歌のするほうへ足を進めた。)










声は、最下層でしていた。



















ラララ
ラララ


(彼女はなんで最下層にいるんだ?)
(彼女は、なんの実験台にされたんだ?)
(ねぇ、 ちゃん・・・・・・)