「あたしね・・・・貴方には、他のどんな人よりも幸せになってもらいたいんだ。」







貴方・・・・獄寺隼人は「はぁ?」っていう顔をした。当たり前だよね。

今は2人きりで屋上にいる。そう、いわゆるサボり組。
授業なんて面倒くさいし、中学校だから退学なんてないし。
別にいいか・・・・みたいな。


あたしの立場は微妙なんだ。
マフィアのこと沢山知ってる。でもマフィアじゃない。
でも、そうなると一般人ともいえなくって・・・・・・・・。


「お前、いきなり何言ってんだよ。」

「あはは、ごめんごめん。なんかそう思っちゃって。」



青空の下、キラキラなびく貴方の銀髪。
太陽の光の所為かな、輝く翡翠の瞳。
瞳の奥には、沢山の辛い経験が写っていて


あたしね、知ってるんだよ。





いつだったか、誰だったかに教えてもらった。

正妻でない女性から生まれて、掟により親から離されて、
でも、幼い貴方はそんなのしらなくて。
悲しいかな貴方のお母さんは殺されてしまった。
貴方はそんなの知らず

ずっと、ずっと待っていたのに。


真実の愛を受け取る期間が、他の子より圧倒的に少なくて。

皆が学校とか塾にいったり、友達とゲームしたり、部活にはげんでいる時に
貴方は必死に生きていた。

皆が親といる期間。
貴方は一匹狼だった。ひとりぼっちだったんだ。

東洋の混血で、ピアノを弾く色白の貴方を、どのマフィアも相手にしなかった。
頑張ってる貴方を見なかった。

そんな中、ボンゴレファミリーが、貴方を受け入れてくれた。


ボンゴレファミリーや、時期ボスの沢田綱吉に、【生きる意味】をやっと手に入れたんだよね。

なのに貴方ったら、何をやってもトラブルで。
迷惑がられたりしちゃって。
貴方はあんなに頑張っているのにね。



あたし、全部分かってるよ?



ボスの為に自分が死んでも構わないといったのは、貴方。
どんなに嫌なことがあっても、いつでも元気な、貴方。




何でだろうね?
見てるこっちが切なくなっちゃって。

かわいそうだよ。
こんなに頑張ってるのに、誰よりも必死なのに。
なんでなんで貴方はいつも・・・・・・・・





「・・・・?」



頬に、また涙が伝った。
いつも貴方のこと考えるとこうなるの。
(感情移入?いいえ、違うの。)


「なに、泣いてんだよ・・・・・。どうかしたのかよ?」



ううん、なんでもないの。



「さっき変な事も言ったし。お前大丈夫か?」


そういって少し乱暴に、でも優しく涙を拭ってくれる。
心配してくれてんの?
ていうか、変なこととか、ちょっと待とうよ。
あたし、真剣なんだけどさぁ。



「だってさ、貴方に幸せになって欲しいんだもん。」


頭に?マークを浮かべる貴方。




「〜〜〜〜貴方の代わりに泣いてんの!!貴方ったら、『恐縮ッス!10代目!』の時しか泣かないもの。」

「なっ・・・・・・・」



貴方は何かを察したのか、それともただ天然馬鹿なのか、一度黙った。


「・・・・俺は、10代目が幸せだったら、幸せなんだよ。」

「・・・・・ばーか。」

「なっ!?なんだよその言い方!!!」



貴方のボスさんが羨ましい。
貴方が命をかけてつかえる。
貴方の生きる意味となれる。

ボスさんは、彼のこと全て分かってあげられるの?
彼はどんな時でも、ボスを・・・・・沢田を思っているのに、
気づいてあげられるの?




「・・・・・タバコ、お前も吸うか?」

「いやよ、吸うもんですか!!」

「はぁ!?意味わかんねぇ!」

「・・・・・ちょっと、くわえる位なら・・・・いい、かも」

「お前、マジ可笑しくなったか?」




あぁ、あたしが。

あたしが、ボンゴレ10代目だったら良かったのに。





「でもよ・・・・・・・・」

「?」









も幸せなら、俺・・・・もっと幸せ・・・・・かも。」






そう言って笑うあなたは、
マフィアとか、そんなの全て消え去ったような

優しい優しい頼りない中学生の笑顔だった。




じゃぁ私も笑顔で返そう。

優しい優しい中学生の笑顔で。






でも、頼りない笑顔にはしない。

(さぁ、どんどん頼ってよ。)












あたし一番
幸せにしたい人


(10年たっても20年たっても)
(あたしは彼の幸せだけを望もう。)
(他に、何にもいらないわ)
(それがあたしの、でも。)