「・・・・・またお前か。」
上級天使はため息をついた。
***
彼女が異形なのか、コリエルなのかは分からない。
浮遊少女ではない。彼女は飛べないようだ。
何も言わず、いつもそこにいるだけ。
「・・・・・お前は誰だ。」
「・・・・・・・・」
「お前の名前。」
「・・・・・・・・・?」
「はぁ・・・もう、いい。」
この会話、何回目だろう。
彼女は話せないのだろうか。今まで声を聞いたことがない。
(12号のようなものか・・・・・?)
大熱波の前に、彼女を見たことがない。
コリエルやマルクト教団のものなら、一通り顔だけでも把握しているつもりだった。
・・・・・一般人・・・か?
ボロボロだが、学生服を着ている。
学生なのは確かだ。
機能しない携帯電話を、焦げた鞄から取り出す。
鞄の中から、懐かしいノートが落ちた。
「
」
と、彼女の名前が記されていた。
彼女はなにも言わず、ただここに居る。
意味も無く彼女を見てみる。
彼女は何の反応もよこさない。
そこで、ふと気づく。
彼女の瞳の中は、恐怖、後悔、寂しさそして、
悲しみで一杯だった。
***
沈黙が続く空間。息が詰まりそうだ。
仕方がないので、歌を歌ってみる。感覚球の刺さる腹が、少しだけ痛い。
彼女は、そんな私をただ見ているだけ。
腹だけでなく、心のどこかが痛んだ。
(名も知らぬ女に、何故こんなにもいっぱいいっぱいになる?)
綺麗なこげ茶の瞳、光がさしたらどんなに輝くのだろう。
大熱波後に見てきた世界、誰にも光は灯っていない。
せめて、彼女だけでも。
すると、初めて彼女が言葉を繋いだ。
「・・・・・・私もいっそ、異形になりたかっ
た・・・・・・・・。」
彼女の白い頬から涙が零れ落ちた。
初めて彼女の感情を見た。
「
」
ほんの少し、彼女の目が見開かれた。
しかし、この先の言葉が思いつかない。
まったく・・・・何年上級天使をやっているんだ、私は。
「
・・・・・・・・
。」
何を、言えばいいんだろう。
何を言えば、彼女は笑うのだろう。
彼女の瞳に、
光が見えるには
(一体どうしたらいいのだろう?)
(私には、彼女を抱きしめる事もできない)
名前変換少なくてごめんなさいorz