並盛中の人々は、我が目を疑った。そして、世界の終わりを感じた。








ここ最近、雲雀恭弥の機嫌が最高に良い。
それはもう、今までに無いくらい。



朝早く学校に来ては花に水をやり、
「綺麗に咲かないと咬み殺すよ。」と微笑んだり、

しきりにトンファーを磨いてはニヤニヤと笑ったり。

鳥に餌をあげて「楽しみだなぁ」と呟く始末。




生徒達は、
「いい獲物を見つけたんだ」とか
「きっと大虐殺を企んでいるんだ」とか、

更には、「花を育てるのは、戦いに巻き込むであろう生徒達の墓に置く為だ」などと、

冗談であって欲しい噂を流しては恐怖を感じていた。







***




放課後、赤くなりかけている空。

綱吉は誰もいない廊下を歩いていた。
手には社会のプリントの山を抱えている。


「放課後に残って、こんな仕事するなんて……俺もつくづくツイてないなぁ……。」



綱吉は小さく溜息をついた。
無理に断らず、獄寺君に頼めば良かった。
と、今になって後悔した。


しかし、過去には戻れない。
綱吉は仕方なく歩いた。







***




「ここが、並盛中学校………。」


時同じくして、1人の少女が昇降口から入って来た。
来賓用のスリッパを鳴らしながら、職員室を探すべく、あたりを見回す。


(待ってるだけじゃ駄目だよね……?)

そう頭の中で結論を出し、彼女……… は歩き始めた。



なかなか綺麗な廊下だ。
掃除が徹底しているのが分かる。

(たしかこの角をまがって……………)



ドンッ!!!


「うわぁっ!!」
「きゃぁ!!」



どうやら誰かにぶつかったらしい。
お互い、倒れてしまった。



「いてて……あぁ!!だ、大丈夫ですか!?」
「いたた…私は平気ですよ。貴方の方こそ大丈夫ですか?」
「あ、俺は大丈夫です!!すいません…俺、前見て無くて……」
「いえ、私も上の方を見ていたし………!!」



は、ばらまかれた社会のプリントに気付き、慌てて拾い始めた。


「……?…って!!うわぁぁプリント!!すいません!!」


綱吉もそれに気付き慌てて拾い集める。


2人で拾ったからか、案外早く拾い終えた。
綱吉はもう一度しっかり彼女を見た。



漆黒の綺麗な髪
ふんわりした表情
可愛さと綺麗さが混じったような、なんとも優しい雰囲気の少女だった。




「あの…私の顔、変ですか?」
「え!?」
「いや、貴方がじっと見るので……」
「あ、すいません!!!」



綱吉は俯いた。
赤くなった顔を隠す為だ。

(うわぁぁ…恥ずかしい事しちゃったよ……)


「あ、プリント半分持ちますよ。どこまで行けばいいんですか?」


気がつけば、 にプリントを半分取られていた。
綱吉は「いいよ、君に迷惑かかるよ!」と言うのだが、彼女は笑うだけだった。

そして、綱吉は仕方なく折れた。


「・・・・職員室まで、いいかな?」
「!私、そこに用があるんです!ちょうど良かった!!」
「っ・・・・・・・。」


そう笑う彼女の顔から、目が放せなかった。






***




案外あっという間に職員室に着いた。
彼女は校長に呼ばれて別室に行ってしまった。


(・・・・・転校生だったのかな・・・・・?)



何歳なんだろう?
何組かな?




そう思いながらも、最終確認として先生に提出するプリントを見た。
そして、思わず目を見開いた。



(・・・・きっちり番号順にそろえてあるーーーーーーーー!!!)






どうやら彼女は、なかなか凄い子のようだ。










初めまして、こんにちは

(そういえば名前聞いてなかった!)
(同じ学校だろうし、いつでもいっか!)








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