俺は、休暇でイギリスにいった事がある。
それが、約1年前・・・・・・・。



***






「ここの町並みはいいな、ロマーリオ。」

「ボス、あんまり羽目をはずしすぎるなよ?」

「わーってるって。」



ロマーリオと部下たちを引き連れて、イギリスを渡り歩いた。
本当はひとりでの休暇もありなのだが、皆でイギリスに行きたかったんだ。



「でも、休暇も今日で最後。明日からは仕事三昧だぜ、ボス。」

「・・・・・・・・うるせぇ。」


後ろで部下達が笑ってる。ったく、皆そろって・・・・・。
まぁ、いつものことだがな。


「ここのアイスコーヒー、イギリスで1、2を争うほど美味いらしい。寄ってこうぜ。」



外に椅子やテーブルがある店だったので、部下も含め全員でそこで一息つくことにした。
洒落た店だったことを良く覚えている。
俺達は店長おすすめのアイスコーヒーを頼んだ。



「お!美味ぇ!」

「ボスーはしゃぎすぎだぞー!」
「まだまだ子供だなぁーボス!」


また部下にからかわれて、悔しくて視線を遠くに変えた時、







彼女がいたんだ。




漆黒の髪、白く短いワンピースにジーンズ、そしてサンダル。
オレンジやパンの入った紙袋を抱えて、店のショーウィンドウを見ていた。

一部に淡い桃色の入った白いパーティードレス。
それを彼女は夢見る瞳で見つめていた。


そして、そんな彼女をじっと見ていた。



「ボス?・・・・・あの子、気になるんですか?」

「!!い、いや別に・・・・・・・。」

「青春だな、・・・あ・・・・・・!!!」

「どうしたロマーリオ・・・・・っ!!!!」



先ほどいた彼女がいない。
辺りを見回すと、3人組の男が彼女の手を無理やり引いて移動していた。


「ボス!」

「分かってる!!」



愛用の鞭を持って、俺達は走り出した。



「おい!そこの3人組!彼女を放せ!!」


思わず英語でなく、イタリア語が出てしまった。
でも言い直す余裕も無い。


「あぁ?なんだこいつら・・・・・」
「おい、なんかまずいんじゃねぇの・・・・?」
「今の、イタリア語だし。それにあの大群・・・・マフィアかも。」


「その子を話せ。」

「ボスのいう事聞いたほうがいいぜ?」


部下達が3人(+彼女)を囲む。今度は英語で話した。
相手はイキナリのことにビビッているようだ。


「放せ、そしたら命は助ける。」
(まぁ、もともと殺す気なんざ無いが。)


「ちっ・・・・・・帰るぞ。」

3人はしぶしぶ(でも、かなり怯えてた)と、彼女を解放して去っていった。(ものすごい速さで)
・・・・・マフィアって、強ぇな。




「あの・・・・・・。」

「大丈夫だったか?」

「はい!ありがとうございました!!
 何かお礼を・・・・・・・」

「ボス、そろそろ帰らねぇと・・・・・・」

「ああ。そういうことだから、礼はいらねぇよ。今度からは気をつけろよ?」

「はい。あの・・・・・えっと・・・・・」

「?」






「えっと・・・・・Grazie!!」







そういった彼女の笑顔が可愛くて、眩しくて、優しくて。

だからはっきり今でも覚えていられたんだ。





***




「そうそう!私もビックリしちゃって・・・・・!!」

「そこで、俺が鞭を出したら3人共ビビりやがって・・・・・・」






「ねぇ、何してるの。」






「うわあぁぁあ!!きょ、恭弥!!?」

「お兄ちゃん!!??」




喫茶店の中にはいないのだが、俺達のテーブル席の大きな窓の向こうから至近距離で話しかけてきた恭弥。
オーラはどす黒く、オーラで死人が出そうだ。窓越しなのに、怖ぇ・・・・・・・
彼の息でうっすら白く曇る窓ガラス。それもなぜか怖い。




「なんで貴方が といるの。なにもしてないだろうね?」

(し、視線で殺される・・・・・!!!!)


「お兄ちゃん!この人はイギリスで私を助けてくれた人なんだよ!」

「ワォ。そうだったの?」

「あ、ああ。・・・・まさか恭弥の妹とはな・・・・・・。」

「そうなんだ。良かったね 。じゃあ彼は・・・・・・うん、咬み殺そうか。」

「「え。」」





((どのみち咬み殺すんですか!!!))


















(カッコいいなぁディーノさん。)
(お兄ちゃんの前で言ったらすごい事になったから、口には出せないけ ど。)






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